【waste】太陽光パネルリサイクル動向(2024.01.02)
資源エネルギー庁、環境省から、「再生可能エネルギー発電設備の適正な廃棄・リサイクルに向けた課題の整理」として、太陽光パネルのリサイクルの方向性が示された資料が 2023.11.24 に出されましたので、ご紹介致します。
🔳 Webサイト
https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000183845.pdf
太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関する検討の方向性
① 資料構成
太陽光発電設備
1.背景と現行制度下における取組
2.廃棄・リサイクルに関する現状と検討の方向性
(1)横断的事項
(2)製造・輸入・販売
(3)運転~事業終了
(4)長期活用・リユース
(5)解体・撤去、収集・運搬
(6)リサイクル
(7)最終処分
3.廃棄・リサイクルに関する検討の方向性を踏まえた論点の整理
その他再生可能エネルギー発電設備
4.廃棄・リサイクルに関する論点の整理
② 太陽光パネルリサイクル全体像にかかるポイント
この全体像のフェーズごとの注目すべきポイントを以下に解説します。
(1)横断的事項
<検討の方向性>
- 廃棄費用・情報などを適切に管理する仕組みの構築
- 製造段階から廃棄・リサイクルが完了するまでのライフサイクル全体での情報共有基盤を、デジタル技術等を活用しなが
ら確立し、効率的なトレーサビリティを確保 - 関係者(設備導入から廃棄・リサイクルに係る全段階に関連する事業者等)が、必要とする情報にアクセスすることの
できる環境の整備
(2)製造、輸入、販売段階
<現状と課題>
- 再エネ特措法の新規認定申請時等に、含有物質情報の登録された型式の太陽光パネルの使用を求めることとなった
- 含有物質情報の提供に関して再エネ特措法の関係省令において講じる措置については、速やかに省令改正を行った上で、含有物質情報に関するデータベースの作成や事業者に対する周知等を進め、2024年春に施行予定
(3)運転~事業終了段階
<現行制度>
- 廃棄等費用積立制度の対象設備(10kW以上)については、最終処分業者やリサイクル事業者の処分費用を調査・考慮して積立基準額を設定し、事業実施期間の後半10年間での積立の実施が義務付けられている
<現状と課題>
- 非FIT/FIP事業等については廃棄等費用積立制度の対象外となっているものもある
- 電気事業の終了に伴い、太陽光パネルは電気事業法の適用対象外となるが、使用済となった太陽光パネルが放置さ
れる場合には、適切に発電設備の解体・撤去が実施されない懸念がある。また、使用済太陽光パネルはただちに廃棄
物に該当するとは限らないため、廃棄物処理法によっても対応できない場合がある
<検討の方向性>
- 発電事業終了後、太陽光発電設備が取り外し・解体を経てリユースやリサイクルのために搬出されるまでの間の、適切な管理に関する関係法令の検証、検討
- 事業規模、事業形態(非FIT/FIP)問わずリサイクル費用が負担される仕組みの検討
(4)長期活用・リユース段階
<現状と課題>
- 事業者団体の調査では、FIT期間終了後の運転継続については、大半が事業継続を検討しているとの結果が出ているが、同時に、運転継続判断は売電の条件によるとの結果も出ている
- 本検討会のヒアリングでは、使用済太陽光パネルの性能等の検査がされないまま不適正に輸出されている可能性があ
るとの指摘があった。また、リユースパネルの使用については、メーカー保証等の問題に関する意見もあった - リサイクル事業の一環として、リユースパネルの性能診断を行っている事業者が存在するが、性能診断に関する標準の策
定等は行われていない
<検討の方向性>
- リユース適合性を診断する事業者によって、リユース品として活用可能性のあるパネルが検査された上で、リユースパネルとして流通する体制の構築
(5)解体・撤去、収集・運搬
<検討の方向性>
- リユース事業者やリサイクル事業者へ引き渡し可能な状態を保った解体方法の浸透
- 一定のエリアにおける効率的な収集運搬の実施が可能となる仕組み
(6)リサイクル段階
<検討の方向性>
- 排出者からリサイクル事業者への使用済太陽光パネルの引渡し及び引取りが、確実に実施されるための仕組みの検討
- 再資源化が優先される処理方法により、最終処分量を可能な限り削減
- 現状のリサイクル処理の技術とその費用を把握した上で、素材ごとに回収できる高度なリサイクル処理技術の確立と処理費用低減を両立
- リサイクルや最終処分にあたって必要となる情報の整理と、関係事業者間で情報が共有される仕組みの構築
- 地域ごとの太陽光発電設備の導入の実情に即して、事業としてリサイクルがされる環境の構築
- 動静脈連携によるガラスやシリコン等の再生資源の用途開発や品質向上による市場の形成
- アンチモンや不純物など、ガラスの再資源化において影響のある成分や物質を除去・高度選別する技術の開発
(7)最終処分
<検討の方向性>
- リサイクルにより最終的な廃棄量を削減した上で、埋め立てせざるを得ないものについては、適正処理がされるよう、処分業者が必要とする情報にアクセスすることのできる環境の整備
- 上記省令の施行後の状況や、今後の議論の内容を踏まえ、追加的論点があれば検討を実施していく
◾️ 中間まとめ
みなさん、(3)運転〜事業終了段階の「廃棄等費用積立制度の対象設備(10kW以上)のリサイクル費用の積立」についてはご存知でしたでしょうか?
これは、太陽光パネル設置等事業者に対して、廃棄時の処理費用を積み立てるという制度であり、2020年6月にコロナ禍騒動に紛れて制定された制度となります。
話を戻して、前項までの注目すべきポイントで、「仕組みの構築」というワードがいくつか見受けられました。
また、(5)の解体・撤去、収集・運搬の中に、「一定のエリアにおける効率的な収集運搬の実施が可能となる仕組み」とありましたが、これは廃棄物の収集運搬過程での積替保管を経由しての効率的な収集運搬が構築されることを意味します。
◾️ 仕組みの基本的方向性(案)
Ⅰ 地域と共生した再エネ
Ⅱ ライフサイクル全体の各プレイヤーの連携の促進
Ⅲ 効率的・効果的な取組/社会コストの最小化
これらのⅠ~Ⅲを踏まえ、全国規模で、ライフサイクル全体の各プレイヤーが、「再エネ発電設備(モノ)」を適切に処理できるよう、必要な「費用(カネ)」と「情報」が円滑に流通する枠組みを構築することで、適切な廃棄・リサイクルが担保される仕組みとしていくとされている。
1.【情報】設備や発電事業に係る情報管理
① 既存制度や、設置形態(屋根置き・地上設置)、事業形態(FIT/FIP・非FIT/FIP)ごとの太陽光発電設備に係る情報の管理方法の在り方
② 管理・共有する情報の内容、活用方法等
2.【モノ】適正にリユース・リサイクルされるための仕組み等の構築
① 発電事業終了後の設備の放置を防ぎ、安全に撤去される仕組み
② 万が一、設備が放置され、発電事業者等が所在不明の場合等の対応
③ 効率的な収集運搬、適正にリユースやリサイクルされる仕組み
3.【費用】リサイクル、適正処理のための費用の確保等
① 既存制度(廃棄等積立制度)を踏まえた上で、非FIT/FIP含めて、リサイクル等の費用や、情報管理等の費用を確実に確保する仕組み
② リサイクル等の費用が適切な事業者へと流れるための仕組み
③ その他の論点(リサイクルの事業性を向上させるための各種支援の検討)
◾️ まとめ
以上となりますが、リサイクル促進に向けての動向をご理解いただけましたでしょうか。今後は、デジタルと活用しての仕組み化、積立金制度の動き、リサイクル等の費用徴収方法、積保を経由しての収集方法の許認可等の動きが注目されていくものと思われます。
これらの動向により、2030年、2035年以降のパネルの大量廃棄に向けての準備は整っていくものと思われますが、FITが終了しても一定の売電価格にはなるものと思われますので、そうすぐには廃棄されないものと私は思っています。
ただし、そのパネルの設置場所に賃料等の諸費用がかかり、売電価格と相殺してメリットが出なければ廃棄されるものと思われますが、そうでないのであれば廃棄処分にはならないものと考えています。
このブログをお読みの皆様は、太陽光パネルリサイクルの動向に関心のある方と思われますので、引き続き情報が入り次第、わかりやすく解説してご紹介していきます。
引き続きのアクセス、どうぞ宜しくお願い致します。
坂本裕尚