How to 委託先監査

廃棄物管理の ”いろは” は、私の書籍の「図解超入門!はじめての廃棄物管理ガイド」で体系的に整理できているものと思われますのでそちらをご覧いただければと思いますが、ここでは、リスク最小化のためにはとても大事な「委託先監査方法」について、フローに沿ってご紹介します。

また、「監査に行きたくても行けない」という中小企業等の担当者の声もよく聞こえてきますので、監査の代わりなるかもしれない「委託先確認シート」での確認方法を下段でご紹介します。

1. 委託先監査(実地確認)

排出事業者リスク

排出事業者が直面する廃棄物に関するリスクは、他の業務と比べて比較的高いものと言えます。その理由は、適切な社内ルールで業務を行っていても、処理を委託した業者によるコンプライアンス違反が生じた場合、その排出元の排出事業者に責任が問われるからです。

リスクの最小化には監査(実地確認)が一番

このようなリスクを最小化するために、排出事業者は処理業者への委託先監査が定期的に必要になります。理想的には、この監査は年に少なくとも1度行われることが望まれます。なぜなら、処理業者のコンプライアンスレベルが他業界に比べて高いとは言えず、排出事業者が常時監視するわけにはいかないからです。
さらに、処理業者への監査の効果として、「我々はあなたの行動を注意深く見ていますよ」という強いメッセージを伝えることにも繋がります。
また、排出事業者が自ら処理工場を訪問することで、自社の廃棄物排出方法を見直すきっかけにもなることも期待されます。
このように、監査は多面的な効果をもたらすものと思われます。

監査時期

監査時期としては、毎年6月の環境月間にするなど、毎年この月と決めてもよいかもしれません。この何月にするかを決めるときに注意したいのは、年末や年度末はできれば避けましょう。それはこの廃棄物業界も他の業界と同じようにもしくはそれ以上に繁忙期なので。繁忙期で何がよくないかは、お邪魔してしまうことに加えて通常の廃棄物の管理状況が見られないからでもあります。

【手順】準備 ▶️ 実施 ▶️ 報告

1. 監査前の準備 ①
監査前には事前に以下の準備、確認を行います。
廃棄物(種類、量、性状)の確認(搬出方法(荷姿)も含めて)※1
② 処理業者の許可範囲の確認 ※2
事前調査シートの送付 ※3

(ポイント)
※1)①の確認は、監査に行った際は必ずこの話がでますので、事務職の方でも必ず現場の方にこのあたりを確認してから監査に行きましょう!
※2)②の許可範囲は、産廃情報ネット等でも確認できますので、変更等がないか確認しましょう!
※3)事前調査シートの雛形を添付(近日公開予定)しますので、適宜アレンジいただいて、監査の1ヶ月前くらいに送付しましょう!
2. 監査前の準備 ②
前項の準備①を踏まえながら、監査当日に向けて以下の準備を行います。
事前調査シートの返送内容の確認(当日確認することの整理含む)※1
処理業者のWebサイト、産廃情報ネットの確認(処理フローの確認など)※2
③ 当日の持ち物の確認(カメラ、事前調査シート、当日訪問チェックシートなど)

(ポイント)
※1)事前調査シートは、返送の確認をするだけではなく、不明点、当日確認する点を監査前日までに整理しましょう!
※2)処理業者の取り組み、処理フローを把握することは、処理業者に対して「よく見ていますよ」というメッセージにもなるので、できるだけ確認しましょう!
※3)この他には、できるだけ複数人で監査して、一人が撮影担当、もう一人が質問担当などの役割分担を決めましょう。
3. 監査当日
当日の監査では、以下の①②③の流れを基本としながら、押さえておきたいのは監査側がその監査の主導権を取るということです。その理由は、処理業者はとかく見られたくないものが多々あるので、それを見えるようにするために。
まず事務所で確認(事前調査シートの未確認事項など)※1
② 現場確認(説明だけではなく、設備が実際に動いているか物を見て確認。指摘事項をできるだけ見つける)※2
③ クロージング(指摘事項を再確認して、軽微な指摘事項を改善する約束 ※3 をする)

(ポイント)
※1)①の事務所での監査の際は、その後の現場で確認するポイントを自分なりに整理しておく
※2)現場確認では、搬入から処理工程、2次委託先・売却先への搬出までを一連で確認
※3)軽微な指摘事項を改善した際は、写真送付等の約束も取り付ける
4. 監査の具体的ポイント(設備ごとの一例)
では監査を行うとき、具体的に、どこを、どの設備をどのように確認すればよいか、主な処理業者のポイントの一部を以下にご紹介します。
焼却施設・・受入検査方法、排ガス等の自主規制値、埋立される燃え殻等の値 など
破砕設備・・受入検査・禁忌品の対応、設備の爆発を防ぐ予防設備、受け入れたものを処理設備に投入しているか など
中和設備・・受入検査の受入禁止の値、中和後の放流先、その規制値と検査頻度 など
収集運搬・・車両への許可証の備え付け、車両点検、最適な車両での運搬(腐敗の可能性のあるものは冷蔵車等)など

※ 詳細は、私の書籍内の監査チェックリストをご参照いただくか、「DX – matching -」に廃棄物等を登録された方へ、特典として詳細な「監査チェックリスト」をお送りします。必要に応じて調整し、ご活用ください。
5. 監査報告書の作成
監査を終えた際はできるだけ早く「委託先監査報告書」を作成しましょう。(人間の記憶力は次の日には約70%もの記憶を忘れてしまうという研究結果もありますので。)
以下はその監査報告書の作成上の注意点となります。
① 監査で撮影した写真を添付(撮影がNGの業者の場合、その理由に妥当性があればOK)
② 軽微な指摘事項結果や、見聞きした情報の記録の中にも監査官の所管を記録しておくのも重要
③ 結論として、継続委託の可否の記録

※ 詳細は、私の書籍内の監査報告書をご参照いただくか、「DX – matching -」に廃棄物等を登録された方へ、特典として改訂した「監査報告書」をお送りします。必要に応じて調整し、ご活用ください。

2. 机上での委託先確認

委託先監査に行けない場合

委託先監査の重要性は理解しながらも、中小企業等の担当者からは「監査に行きたいが難しい」という声がしばしば聞かれます。そのような場合は、アンケートのような「委託先確認シート」を処理業者に送り、その回答を得ること、最新の許可証を入手して確認される方法をおすすめします。

1. 委託先確認シートの送付
上段の監査を年に一回行うことができない場合、「委託先確認シート」※1 を処理業者に送り、さらに最新の許可証をすべて返送いただくようリクエストします。(※1「DX – matching -」に廃棄物等を登録された方へ、特典としてお送りします。)
(委託先確認シートの項目例)
2次委託・・処理後の2次委託先
工場環境・・土地利用区域、都市計画区域
場内環境・・騒音、振動等の発生の有無
環境規制・・環境規制値と自主基準値、その測定値
行政対応・・行政からの視察の有無、指摘事項等があったか(あった場合はその内容)
クレーム・・周辺住民や取引先からクレーム等があったか(あった場合はその内容)

※2)委託先確認シートの内容は、廃棄物等の種類、性状、物量、排出状況等を考慮して、必要に応じて調整し、ご活用ください。
※3)返送期限は、3週間程度あると十分ではないかと思われます。
2. 回答内容の確認
回答内容を確認し、問題点や疑問がないか確認します。
もし問題点が発見された場合や疑問を持たれた場合は、追加ですぐにその懸念点を確認しましょう。

また、その委託先確認シートの回答内容に加え、そのレスポンスや処理業者の対応は、処理業者を選ぶ際の判断材料になり得ます。
✅ 期限内に対応してくれたか
✅ 十分に吟味されての適切な回答内容か
✅ リクエストした許可証がすべて添付されているか
など
3. 実地監査に行かなくてよいか評価
回答内容とそのレスポンス、追加質問対応などを鑑みて、本当に実地監査に行かなくてよいか評価します。
ここで重要なのは、委託先確認シートや許可証などの確認はあくまで机上の書類上での確認であり、何か疑問を感じた場合や少しでも不安がある場合には、現地に行って実地確認することを強くおすすめします。

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